扇状地の自噴

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扇状地の自噴

北アルプスは、日本有数の多雨地帯で、年間降水量は黒部川流域で31億トン、下流の扇状地上で3.4億トン、合わせて34.4億トンと計算されています。
愛本の観測では、流量が28.7億トン、このうち14億トンが農業用、発電用等に利用するため取水され、14.7億トンはそのまま本流を流れていきます。
地下水は、黒部川本流からの浸透水と扇状地上、特に水田からの浸透水によって形成されます。

地中をゆっくり移動して流れる地下水の中でも、地下20~30メートル前後の浅い層を流れる水を自由地下水、または自由水と呼んでいます。
この地下水は、地表の降水や、水田の水の状態によって水位が変化しやすい層にあります。
今日の家庭用井戸の大部分はこの自由水を利用しています。
自由水の層が地表と交差するところより下流側で地下水が地表にしみだすのが自然の湧水で、国の天然記念物となっている「杉沢の沢スギ」などはこのような湧水地帯に生育しています。

これに対して、黒部川の上流から伏流した水は、もっと深い地層を流れ、扇端部で粘土層などの不透水層の下を流れると、1気圧以上の圧力を持ち、このようなところでは、地表から30メートル以上掘ると、自噴します。
このような地下水を被圧地下水と呼んでいます。
このような条件を持つ、木根、下飯野、笹原、栃沢、石田を結ぶ線から海岸までの間に自噴地帯があります。
黒部川扇状地で、地下水の利用が本格的になったのは、戦後のことで、昭和30年以降、河川水にかわって地下水の利用が急増しました。
また近年は、工業進出に伴う工業用水や、道路融雪など、地下水に対する需要はますます増えつつあります。

地下水の流動
地下水の流動